わたしは裸で母の胎を出た。裸でそこに帰ろう。(ヨブ記１-21）
ヨブは立ち上がり、衣を裂き、髪をそり落とし、地にひれ伏して言った。
「わたしは裸で母の胎を出た。裸でそこに帰ろう。
主は与え、主は奪う。主の御名はほめたたえられよ。」
このような時にも、ヨブは神を非難することなく、罪を犯さなかった。
Then Job got up and tore his clothes in grief.
He shaved his head and threw himself face downward on the ground.
He said, “I was born with nothing, and I will die with nothing.
The Lord gave, and now he has taken away. May his name be praised!”
In spite of everything that had happened,
Job did not sin by blaming God.
（ヨブ記１‐20～22）
この世に、なぜ苦しみがあるのか。
なぜ悪があるのか、という問題に正面から取り組んでいる書に『ヨブ記』があります。
主人公ヨブは、「無垢な正しい人で、神を畏れ、悪を避けて生きていた」です。
神に豊かに祝福され、家族にも、財産でも、この上ないほど恵まれた富豪でした。
ヨブの敬虔さを神に誉める神に、サタンは「ヨブが、利益もないのに神を敬うでしょうか」と挑発します。
さらに、もしも与えられたものを奪われてしまえば、ヨブは、「面と向かってあなたを呪うにちがいありません。」と決め付けます。
そこで神は「彼のものを一切、お前のいいようにしてみるがよい」とサタンにヨブへに攻撃を許すのです。
すかさず、サタンは次々と不幸を送ります。
そのため、ヨブの幸せは急反転。
財産、家畜は奪われ、家は倒され、子どもたちは殺されてしまいます。
そういう悲報を相次いで受けたヨブが悲しみ、苦しまなかったはずはありません。
「何も悪いことをしていないのに、なぜ自分だけがこんな辛い目に遭わなければならないのだ。神も仏もあったものか！」
と嘆いても、仕方ないところです。
けれども、彼は地にひれ伏して言うのです。
「わたしは裸で母の胎を出た。裸でそこに帰ろう。主は与え、主は奪う。主の御名はほめたたえられよ。」
この言葉は、有名です。
ヨブに限らず、人間だれしも、生まれたときは何も持たずに生まれ、何も持たずに死んでいきます。
その間に神から与えられたものには感謝こそすれ、突然取り上げられたからといって、神を呪うことなどできない。
むしろ、これまで自分に様々の恩恵をくださった神は賛美されよと、ヨブは信仰表明しているのです。
