2019年2月14日に、新書版『聖ホセマリア・エスクリバー 天と地をつなぐ道』(ドン・ボスコ社)を発行していただきました。
日常生活をとおして自分と周りの人々を聖化するという精神を実践し、オプス・デイを創立した聖ホセマリア・エスクリバー神父の小伝。
2002年に神父を列聖した教皇ヨハネ・パウロ二世が「日常生活の聖人」と称した聖ホセマリアは、神の啓示により、日常生活をとおして自分と周りの人々を聖化するという精神を実践し、多くの人々に伝えていった。
また、日本に対しても特別な敬意を抱き、1975年に帰天する直前まで日本のために祈り続けていた。
最終章には、黙想の手引きとして、聖ホセマリアの著書で、現在は入手し難くなっている『道』『拓』『鍛』三部作からの言葉を聖霊の十二の実に分けて多数紹介している。
目次
はじめに 天と地をつないだ「日常生活の聖人」
序章 聖ホセマリア・エスクリバー
第一章 子ども時代
第二章 夢に向かって
第三章 オプス・デイ
第四章 スペイン内戦の中で
第五章 新しい形 新しい未来
第六章 夢の実現 世界中にはばたく仲間たち
第七章 日本への思い
第八章 聖ホセマリア・エスクリバー神父の言葉
あとがき~感謝をこめて~
付録:聖ホセマリア・エスクリバーの年表
オプス・デイについて
聖ホセマリア・エスクリバー
天と地をつなぐ道
中井俊已 著
新書判 並製 222頁
本体700 円+税
以下は、その件を紹介する『カトリック生活』2019年3月号(2月10頃発行)の拙稿です。
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いのり・ひかり・みのり
連載第八十八回 天と地をつなぐ道
「わたしは道であり、真理であり、命である」(ヨハネ14・6)
新刊ドンボスコ社新書
この二月にドンボスコ社新書『聖ホセマリア・エスクリバー天と地をつなぐ道』を発行していただけました。その発行経緯と本の内容を少しご紹介します。
聖ホセマリア・エスクリバーとは、二〇〇二年に列聖されたスペイン人司祭であり、オプス・デイ属人区の創立者です。
列聖後、オプス・デイには様々な進展がありました。後継者としてオプス・デイの属人区長となっていたアルバロ・デル・ポルティーリョ司教は、二〇一四年に列福。さらに現在、十六名のメンバーが列福・列聖手続き中です。
日本でも、二〇一八年六月に大阪大司教区の補佐司教にオプス・デイの酒井俊弘神父が任命され、七月に司教に叙階されるなどのお恵みがありました。
そのため、今まで関心がなかった方の中にも、「オプス・デイ属人区って、何?」「聖ホセマリアって、どんな聖人?」など素朴な疑問をもつ方が、増えてくるのではないだろうか。
そう考えていた折、昨年の六月二十六日(聖ホセマリアの帰天記念日)のごミサの中でひらめいたのです。
出版社が閉鎖して手に入りにくく、かつ内容も古くなっている拙著『天と地をつなぐ 属人区オプス・デイ創立者ホセマリア・エスクリバー小伝』(精道教育促進協会)の改訂版を出すことを。
この本は日本人の手による初めて(かつ唯一)のホセマリア・エスクリバー神父の伝記でした。
十七年前、長崎市に住む一教師だった私が取材のために夏休みにローマとスペイン各地を旅し、その後は本業の傍ら、原稿の執筆・修正と格闘し、一年間半以上をかけ、多くの方々の助けによって、ようやく発行できた本です。
早速、改訂版発行のアイディアをドン・ボスコ社編集部に提案したところ、賛同を得ました。
ただ、そのまますんなりとはいきません。旧版は、一般の人にはわかりにくい部分が多いとのご指摘を受け、様々なご指導や助言をいただきました。
それに応じて、章立てを変え、文章や語句の修正をしました。日本での内輪話に思われる部分は割愛しました。
しかし、加筆したところも多くあります。最終章として新たに加えた「聖ホセマリア・エスクリバーの言葉」は、読者が黙想に活用できるようにという編集部からのアイディアです。
おかげさまで、より親しみやすい本になったように思えます。
聖ホセマリアの伝記として
本書は、一度も聖ホセマリアに会う機会のなかった日本の人々に、その生涯について分かりやすく紹介するために書いたものです。
聖ホセマリアとその教えを知ることは、多くの人に役立つと私は確信しています。信者だけではなく、キリストを知らない多くの日本人に役立つ何かを与えるでしょう。
実を言うと、私も聖ホセマリアに会ったことがありません。しかも、大学生になるまでキリスト教の信者でさえなかったのです。
しかし、大学一年生のとき、聖ホセマリアが書いた『道』に出合いました。『道』は、世界五十か国語に訳され、約五百万部発行されている霊的書物のベストセラーです。九九九の短文からなるこの黙想のしおり集は、次の言葉で始まっていました。
「あなたの一生が無益であってはならない。役に立つ何かを残しなさい。信仰と愛の光ですべてを照らすのだ」。(『道』1)
当時、宗教に無関心かつ懐疑的だった私が、この言葉とこの本に出合っていなければ、カトリック信者にはなっていなかったでしょう。
今、カトリック信者であることに誇りと喜びがもてるのも、聖ホセマリアのおかげだと有り難く思っています。
このように面識のない者にも、聖ホセマリアは今も影響を与え続けているのです。
なお、現在、『道』は同じく聖ホセマリアの著書である『拓』、『鍛』とともに入手し難くくなり、再販未定(電子書籍で販売)ですが、今回発行された新刊の最終章にはこの三部作の中から聖霊の十二の実に分けて多数ご紹介しています。
日常生活を聖化するために
聖ホセマリアを列聖した教皇ヨハネ・パウロ二世は、列聖式翌日の感謝ミサで語りました。
「聖ホセマリア・エスクリバーは『日常生活の聖人』だったと言えます」
まさに聖ホセマリアは、神の啓示を受け、日常生活を通して自分とまわりの人びとを聖化していく精神と方法を実践し教え続けた司祭でした。
「天と地はあの遠い地平線のあたりで一体になっているようだ。ところで、天と地が本当に一体になるのは、神の子であるあなたの心の中である。これを忘れないでほしい」(ホセマリア・エスクリバー著『拓』309)
わたしたちが日常生活を聖化しながら、神が示された天と地をつなぐ道を歩んでいくならば、父である神も、天国の聖ホセマリアも、愛情をもって助けてくださると思います。
『カトリック生活』2019年3月号より
なお、新書で割愛した旧版の「日本への夢」はこちらにすべてアップしています。