誕生の喜び~もうひとりの博士の物語
イエスが誕生した時、遠い国から星に導かれて、東方の博士たちが黄金・乳香・没薬の贈り物をもって訪ねてきたことが聖書に記されています。
贈り物が三つであったことから、伝統的に三人となっているのですが、実は四人目の博士の物語があります。
その博士は、財産を売り払って、救い主への贈り物にするいくつかの宝石を手に入れます。
ところが、旅の途中、病気で死にかかっている人を助けたために、他の三人との約束に間に合いませんでした。
彼は、仕方なく一人で旅をし、三日遅れてベツレヘムに辿りつきました。
そこに、ヘロデ王の命令で、近辺の二才以下の子どもを皆殺しにする兵卒たちがやってきます。彼は宝石を隊長に与え、一人の赤ん坊の命を助けます。
その後、彼は救い主の家族が逃げたというエジプトに行きましたが、どこを探しても見つけられませんでした。
三十三年の歳月が過ぎました。
過越しの祭の時、エルサレムの町で、彼はいま処刑されようとする男のうわさを聞きます。
「ナザレのイエス」。自分が一生旅を続けて探していたのは、この方だと悟った彼は、残る一つの宝石をもって処刑場に急ぎました。
しかし、ちょうど若い娘が奴隷として売られていくところに出会います。
彼は救い主に贈るつもりだった宝石で娘を助けました。
この時、空からイエスの美しい声が聞こえてきました。
「はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。」(マタイ25-40)
彼はイエスの誕生を祝うことはできませんでしたが、イエスは彼からの贈り物を受け取っていたのです。
同様に、私たちが隣人に捧げる愛の贈り物は、イエスの喜びとなるのです。
ラジオ「心のともしび」2016年12月放送原稿
2018年10月に、この物語を絵本『もうひとりのはかせ』(新教出版社)として出版しました。幼児から大人まで読んでいただける絵本です。