心の灯

ある人の一言~来日された教皇フランシスコの言葉

ある人の一言~来日された教皇フランシスコの言葉

昨年十一月に来日された教皇フランシスコは、日本人に深い感銘を残されました。

教皇の立ち居振る舞いや表情は、気さくで親しみやすく温かいもので、各地でのスピーチもそれぞれの立場の人に寄り添う内容のものでした。

その様子や公式スピーチはネットにアップされ、何度でも振り返ることができます。

さて、ここで取り上げる教皇の言葉は、一般には知られていないもので、広報担当の日本人司教がスペインのカトリック雑誌に紹介したものです。

来日初日、冷たい霧雨が吹きつける羽田空港に到着した際、教皇は待ち受けていた高校生たちに近寄って、出迎えの感謝を述べた後、次のように言われたそうです。

「歩きなさい、そして倒れなさい。そうすれば起き上がり方を覚えるでしょうから」

若者への愛と信頼をともなった温かな眼差しが感じられる言葉だと思いました。

一般に日本の若者は、失敗を恐れて縮こまる傾向があります。困難に出会うと夢に向かって歩くことをあきらめてしまう人もいます。

多くの大人は、「歩きなさい」とは言うでしょう。しかし教皇は、「そして、倒れなさい」と言われるのです。

なるほど。倒れる、失敗する経験も大事です。それがなければ起き上がり方を学べません。起き上がり方を知った人は、また歩き始められます。

何度倒れても、何度でも起き上がり、目指す夢に向かって前に前に進んでいけるのです。

聖なる人とは、倒れなかった人ではなく、何度倒れてもその度に立ち上がった人です。

当時八十二歳の教皇も、倒れることを恐れず、日本での超過密日程をこなされた、常にチャレンジする人です。

教皇の言葉はその姿を思い出させ、今も私を励ましています。

ラジオ「心のともしび」2020年6月放送原稿