偉大な人は小さなことを大切にします。
世界中の人からその在命中も「聖女」と呼ばれ尊敬されてきたマザ-・テレサは、マケドニア生まれのアルバニア人でインド国籍をもったカトリックのシスタ-(修道女)でした。
マザー・テレサの教え
インドには約十億人のヒンズ-教徒と一億人のイスラム教徒に対して、キリスト教徒は、二千二百万人。カトリック信者はその半分しかいません。
マザ-が天に召されたとき、インドでは異教徒であるにもかかわらず、国葬となり、世界中の人が弔意を表しました。
そのことだけも、彼女がいかに宗教や民族を越えた偉大な人物であったかが分かります。
彼女はインドの貧しい人を助けるために修道会「神の愛の宣教者会」を設立し、自ら先頭に立って献身的に人々に奉仕しました。
そして、会の組織と活動は世界中に広がりました。
しかし、彼女は私たちに、それと同じような組織をつくって活動せよとすすめたことはありません。
マザ-・テレサが何度も繰り返し言ったことは次のようなことです。
「身近な小さなことに誠実になり、親切になりなさい。その中にこそ、わたしたちの力が発揮されるのですから」(『マザ-・テレサ 愛のこころ 最後の祈り』)
人にはそれぞれ、神さまからいただいた使命があり、神さまが望まれる道は人によって異なります。
たとえば結婚に関して二つに分けるとすると、神さまのために結婚をしないで仕える道もあれば、結婚して仕える道もあります。
マザ-・テレサは、結婚をしないでシスタ-となる召しだしに応え、しかも新しい修道会を創設するというみ旨に従いました。
けれども、自分とは違う道を生きる人々を軽んじていたわけではありません。
結婚は子供を生み育てよい家庭をつくりながら、自分やまわりの人を聖化していく召しだしです。それもまた神さまが多くの人に望まれていることです。
小さなことを愛のために
そのことをよく承知していた彼女は、そういう人々にも自分の置かれた場で、「身近な小さなことに誠実になり、親切になりなさい」と言うのです。
「世界には苦しみがたくさんあります。ほんとうに、とてもたくさん。物質的な苦しみは、飢餓や家のない苦しみをはじめ、さまざまな病気などからもたらされます。しかし、最も大きな苦しみは、やはり孤独です。愛されていないと感じることですし、だれ一人友がいないということなのです。どんな人間も、いつか経験することにあるかもしれない最もひどい病は、自分がだれからも必要とされていない存在だと感じることです」(同前著)
私たちの身近にいるこのような人々の苦しみを癒やすために、私たちができることは何でしょうか。それは、いつも小さいことです。
しかし、小さなことに大きな愛を注いでいく、「その中にこそ、わたしたちの力が発揮される」のだと彼女は言うのです。
彼女のすすめは、行動をともない具体的です。たとえば、ほほえむこと。
「平和はほほえみから始まります。笑顔なんかとても向けられないと思う人に、一日五回は、ほほえみなさい。平和のためにそうするのです。神の平和を輝かせ、神の光をともして、世界じゅうのすべての人びとの心から、あらゆる苦しみや憎しみや、権力への執着を消し去りましょう」(同前著)
マザ-・テレサは、自分ができることは小さなことだと思っていました。 しかし、どんな小さなことにでも、彼女は自分を傷つけるまでの大きな愛をこめました。
「わたしは慈善事業をしているのではありません。ただ、目の前のイエス・キリストに仕えているのです」としばしば口にしていました。
小さなことを大切に、神さまへの愛のためにおこない続けた人だったのです。