小事は大事

ていねいに、最後まで~小事は大事

子供たちに漢字を教えるとき、教師は普通「ていねいに書きなさい」と言います。

一般にこれには次のような意味があります。

技術的には、「一点一画をおろそかにしないで書こう」「書き順に気をつけ、書き順も覚えながら書こう」「はねるところ、はらうところ、とめるところをよく見て書こう」など。精神的には、「一所懸命書こう」「心をこめて書こう」ということです。

これらをひっくるめて「ていねいに」と言うのです。

「ていねい」でないことのデメリット

「ていねい」でなければ、子供の場合、不正確で間違った文字を書くことが多いからです。間違った漢字を、間違った書き方で、いくつもいくつも乱雑に書き連らねることがあります。

こんな作業を練習と称して、どれだけしたところで、正しい漢字を覚える役には立ちません。間違った知識を頭に刻みつけてしまい、時間と労力を浪費してしまうばかりです。

しかし、わかってはいても、終わりまでていねいに書くことは、実際なかなか難しいことです。初めは新鮮でおもしろく、やる気もあり、一所懸命にできても、そのうち少しずつ気がゆるんできます。

同じ字を何度も書いていると、その単調さに、だんだん退屈にもなります。

作業が長くなり、時間がたてばたつほど、その傾向は強まり、手を抜きたくもなります。

初志貫徹するためには、初めの気持ちを持続させる努力なり忍耐力なりが必要となるのです。

「ていねいに、最後まで」のメリット

「ていねいに、最後まで」書かれた文字は、しっかりと確かなものです。

字のうまさも次第に上達していきます。そしておもしろいことに、この忍耐強さを要求される学習を通して子供の忍耐力も育まれ、その人格も成長していくのです。

ところで、これは子供が字を覚えるのに限ったことではありません。

専門的な仕事であれ、日常的な家事であれ、仕事を果たす上で「ていねいに、最後まで」果たすことは、仕事における技術を上達させ、人格を高める効力をもっています。

一流の職人は、一流の仕事をします。細かいところまで目が行き届き、ていねいな仕事です。最後まで手を抜かずに一所懸命してくれたことがわかります。

どんな分野であれ職人として一流になるには、長い修業の期間が必要です。腕の良い一流の職人と言われる人は、何年も何年も誠実に地道に、そのような仕事を積み上げてきたのです。

これに反して、ていねいでない仕事は、二流、三流の仕事です。最後までしていない仕事は、未完成の仕事です。商品にたとえれば、不良品であったり、粗悪品であったりします。

そのような仕事をどれだけ多くこなしても、一流の職人として人の信頼を得ることはありません。

この原理は、一般社会人や主婦にも言えることです。

良い仕事の果たし方をしている社会人は、その仕事を通して、いつの間にか良い社会人となります。良い家事の果たし方をしている主婦は、次第に良い主婦になっていきます。

仕事を通して人格が完成されていきます。

その良い果たし方のキ-ワ-ドは、一般社会人であれ、主婦であれ、子供であれ、同じだと思えます。

それは「ていねいに、最後まで」です。