親と子ども~子育てという仕事を通して
子育ては、すばらしい仕事です。
子育てには、二つの目的があると私は考えています。
一つ目は、子どもが成長しながら自立し幸せになることです。
子どもは、親に育てられ、幸せになるために生まれてきたのです。
ただし、親がいなくても自分のことは自分でできる、他の人と心を通わせていける、困難があってもたくましく道を切り開いていけるような人間になってほしいものですね。
このような自立した一人の人間を育てるのは、簡単なことでありません。むずかしく、また価値ある仕事です。
子どもが生まれたとき、そんな仕事を両親は神様から任されたのです。
さて、子育てのもう一つの目的は、親の側にあると私は考えています。
つまり、二つ目は、親自身が子育てという仕事を通して成長し幸せになることなのです。
私たちも人間として幸せになるために、この世に生まれてきました。
子育てという楽しく、難しく、素晴らしい仕事を通して、人間的に成長し、より幸せな人生を営んでいく機会をあたえられているのです。
子育てを通して、人を愛し、人から愛される素晴らしさを私たちは学びます。
同時に、愛する努力に疲れる人間の弱さも知るでしょう。自分の親が、その弱さを感じながら、どんな思いで自分を育ててくださったかも学ぶでしょう。
親も子どもとして、人や神様に感謝し、成長し、幸せになれるのです。
聖母マリアと聖ヨセフは、イエスを産み育てていく上で、命がけの困難や多くの苦労があっても、愛と信頼と感謝のある生活を送ることができました。
神様から任された子育てという仕事を通して、私たちも聖母マリアや聖ヨセフのようにより聖化され、幸せになることができます。
ラジオ「心のともしび」2020年5月放送原稿
絵画:ムリーリョ 《小鳥のいる聖家族》 1650年頃 油彩 マドリード、プラド美術館蔵